人民元、切り上げへ?

人民元がドル・ペッグをやめるという記事が、朝日の一面に載っていた。一面トップはワールド・カップの「日本惜敗」だが、どちらが重要事項やら。もっとも、いちばん重要な記事は小さく扱うのが朝日流、というところもあるので、別に目くじらを立てる必要もない。
結果は実質、人民元の切り上げなのだろうが、これが中国の労働者のストの大波と同時に起きると、海外企業としては中国に投資するのに二の足を踏まざるを得ないのではないか。中国人の労働者としての適性は凄まじいもので、農村がまるごと画家になって偽ゴッホを描いたり、昨日まで畑を耕していた人たちをバイオリン職人に仕立て上げたりするのだが、それでも付加価値の高い製品を作るような教育投資を中国政府、中国企業が行っていないというのも、また事実である。中国市場が今後、世界中のみなさんの期待の通りに巨大化するか否かは、ひとえに中国の労働者の生産性にかかっているわけだが、これがけっこう怪しげなわけである。今回の為替政策の変更は、まあ切り上げになるのだろうが。

トルコ空軍が、イラク北部に爆撃を加えた由。トルコが突然、イスラム寄りになった理由だが、国民の価値観の変質もさることながら、アメリカによるイラク改造がイラク国内のクルド族の自治権をどんどん強化しており、これがトルコ国内のクルド族の独立運動を強めるという連鎖が作用しているのだろう。もっとも、トルコ共和国が建国以来の国是である世俗主義を捨てたのであれば、トルコ語の単一言語主義も捨てることが可能、つまりクルドトルコ人との和解も可能だと思うのだが。もっとも、アメリカがトルコの死活的な利益など一顧だにしないことは、わかったトルコとしては、とりあえずEUアメリカも無視して、自国のリソースを見直して、行動を色々起こしはじめたということなのだろう。先の、ブラジルと組んでのイラン擁護の動きも合わせて。

そのトルコだが、昼ドラをアラブ諸国に輸出して、大人気らしい。イスラム教徒が『ダイナスティー(古い!)』や『ダラス(もっと古い!)』、はたまた『デスペレートな妻たち』みたいな騒ぎを演じているというのが、アラブ諸国の庶民、中流にとっては一個の「解放」なのだろう。まあ、自分たちの文化に即しており、しかも自分たちの欲望に忠実なソフトウェアが登場すれば、熱狂するだろう。
トルコがイスラム・カードを切るというのは、ジョージ・フリードマン『100年予測』にも登場した予測である。これが早くも現実になりつつあるわけだ。トルコ製ソフトによるオスマン・トルコ文化圏復活は、すぐそこまで来ていそうである。

実は6月2日に、生まれて初めて大阪を訪れた。みずほ総研のお招きで、講演を行う機会を得たのである。名古屋のような街を想像していたのだが、予想を超えて大都会だった。大阪の人口の300万というのは、ニューヨーク市シンガポールと同じくらいだから、当然なのだが。探検する暇はなし。タクシーの運転手さんの話の面白さ(新大阪と講演会場を結ぶ往路復路とも)が印象に残った。
大阪の場合、国立の大阪大学があり、府立大と市立大があるわけで、これを一か所にまとめれば、活気を呼び戻すことも可能なのではないだろうか、などと漠然と考えてみた次第。もっとも、大阪市内の地理はまったく知らないので、それ以上考えは進まず。

遊説をする管直人、消費増税に触れず、という記事をYahoo! japan で見かけた。消費税の話をしたうえで、風当たりの強そうな街頭でぶれてしまうというのは、もう最悪だと思う。7月参院選は、民主党の大敗という気が、どんどん強まる。月末には管の支持率は末期鳩山なみ(一割前後)まで落ちているのかも。まあ、管の場合はほんとうに嫌な人らしいので、人格が見えてくるとともに、支持率は急落するというのは、予想がついていたのだが。

アメリカで購入したDVDを次々と見る。テレビは見ないのだが、英ぞ派よく見ているのだ。

Sexy Beast
ベン・キングスレーの怪演が輝く一作。服役を終えてスペインで妻ともども引退生活を楽しむもと犯罪者のもとに、大がかりな窃盗に参加しろという依頼を携えて、ベン・キングスレーがやって来る。その要求ぶりというのが、恫喝というのを飛び越えて、心理的拷問。キングスレーのサイコパスぶりだけで傑作。脚本、撮影もよし。

Surveillance
黒沢『羅生門』を念頭に置きつつ、関係のない領域へと飛んでいってしまった。ビル・プルマン(『インデペンデンス・デー』の大統領)とジュリア・オーモンド(誰も覚えてはいないだろう。誰も見ていないと思しき『麗しのサブリナ』リメイク版で、オードリー・ヘップバーンが演じた役をやっていた)がFBI捜査官で、田舎町で起きた殺人事件の真相解明のためにやって来る。映像と雰囲気がよく、サイコホラーとしてはそうとうに上出来。ビル・プルマンはきっと、故デニス・ホッパーの真似をしているのだろう。

Carriers
低予算ながら上出来の破滅SF。死亡率が限りなく100パーセントに近く、感染力もきわめて高い肺病によって、人類は滅亡間近。そうした中、少年時代の思い出の海岸リゾートを目指し、兄弟がそれぞれの恋人を連れて、自動車で裏道を走っていく。アメリカの人気若手俳優(ハリウッドと日本、韓流を問わず、若手の二枚目俳優は区別がつかないので、名前もわからない)と『コヨーテ・アグリー』と『地獄の変異』のパイパー・ペラーボ早見優ちゃんに似ている!)が好演。映像は美しい。数年前に完成していたのが、なぜか今年か昨年まで劇場公開を待っていたようである。

Pontipool
低予算ながら上出来のゾンビ映画。『マーダー・ライド・ショー』正続のビル・モーズレーが主演した『ゾンビラジオ』(だったか?)も低予算ながら脚本の力でなかなか楽しめたが、それと同じく、主人公はトークラジオのホスト。演じるのは『2012』のラストに登場する巨大潜水艦の艦長役で……誰も気がついていないであろう、ビル・マクハッティー。こちらはゾンビ・ウィルスが言葉に感染するというもの。では、どうやってそこから逃げるのか? 英仏バイリンのカナダならではの物語か。脚本は演劇的な完成度。演技もよし。

色々と見ていて、とりあえず面白かったのは、こんなところ。いずれも日本未公開と思われる(もっとも、以前アメリカで購入したか、アマゾン本国版で取り寄せた超問題作 Martyrs 、絶対日本に来ないと思っていたらば、劇場公開のうえ、DVDがレンタルまでされているので、先々、わからないのだが)。こちらについては、見終わり次第、順次報告していく予定。