日曜日にも、こんなニュースが……

AP電によると、イランの中央銀行の総裁が「ユーロを売らない」と宣言した由。イランの外貨準備は一昨年の段階で830億ドルあったのだが、リーマン・ショック以後、営々としてユーロに切り替えていた。それが、先週イランの地方紙に、450億ユーロをドルに戻すのではないかという記事が出たことに応えての、中銀総裁発言となったようである。
なんで、イランの地方紙にそんな記事が出るかね? ドバイの経済紙ではなく?
それはおそらく、主要紙で中央銀行総裁がその記事を否定するため、であろう。
イランは、ユーロ圏を恫喝しているのだ。確かに、ここで何兆円相当の大規模なユーロ売りが起きれば、ユーロは暴落するだろう。一ユーロ=一ドルの壁(「パリティ」)さえも突破されてしまうかもしれない。ユーロ圏にしてみれば、たいへんな圧力である。そして、イランとしては圧力をかけることで、ユーロ圏の主要メンバーであり、国連安保理常任理事国であるフランスを揺さぶろうとしているものと思われる。
こんな気の利いた手を考えたのは、ギリシャ危機の支援をとっかかりに欧州に恩を売ったトルコか、はたまた本音ではイランと和解したがっているアメリカか。この手があまりにうまく行くと、次にはドル売りの恫喝でアメリカを揺さぶるという手が横行しそうだが、そうした短慮さが、またアメリカらしくもあったりする。

北朝鮮問題に関していつも不思議なのは、中国の対応ののろさだ。北朝鮮国内の流通は今や中国人商人が完全に掌握しており、中国政府には北の内情が手にとるようにわかるはずである。よほど北の経済、治安状態が悪いのか、それとも胡錦濤としては、他にもっと気になることがあるのか。ただ、中国にとっても、北の将来は(北京に近いだけに)大問題なはずである。中国共産党の意志決定の実態が、独裁ではなしに決断に時間のかかる合議制だといったことで、こののろさは説明がつくのだろうか。だが、これまでの数々の半島危機の前例から、もう少し色々と対策を考えておいてもよさそうなものだ。
ただ、北に関しては、一〇年後には今の形で存在していない可能性がきわめて高いということは言えると思う。韓国としては、統一は国民的な要望だが、そのコストがあまりに高く、しかも北朝鮮労働党の残党が統一韓国における最強の政治集団となってしまうという問題もあり、想定外だろう。かといって、国連管理というのでは、世論が招致しない。
韓国はOECSにも加盟する民主主義の先進国だが、けっきょく北朝鮮統治のために中国に倣って「特区」制度を設けざるを得ないのではないか。一国の中で、二種類の国民が存在することになるわけである。
似たような措置は、日本も財政破綻に見舞われた後で、都市部に失業者が殺到するのを回避するために、実行するかもしれない。最近、Beijing Consensus という本がアメリカで刊行され、その中身は未見なのだが、おそらく国家と個人、企業の関係を論じているのだろう。独裁のほうが効率的だという、おなじみの議論である。だが、共産中国の経験で最も役に立つのは、一つの国の中であれば法制は均質でなければならないとか、移動の自由は当然だといった、私たちの近代国家観を打ち破ってくれたことにあると思う。制度は統治の都合で決まる − この単純な事実を、経済特区制度でもって世界に思い起こさせてくれたことが、共産中国の人類文明にとっての貢献ということになるだろうか(実はアメリカも、民間警備会社の職員のほうが、全国の警察官よりも数が多くなっている。ゲーテッド・コミュニティなどによる生活空間の分割が進んでいるのだ。民間警備会社といった場合、何せアメリカなのだから、お年寄りの警備員から精強な傭兵まで、中身はさまざまなのだろう)。