回復は続かず

昨日の欧米市場の急回復だが、ダウは月末(アメリカは月曜日が祭日で市場もお休み)になってまたしても下げてしまった。1.19%減の10137ドルで5月を終えたわけである。イギリスのフィナンシャル・タイムズ指数は0.13%の下げ、ドイツ市場は0.15%の下げ、フランス市場は0.29%の下げだった。

昨日の欧州勢に関して言うと、凄まじいボラティリティーの挙句の微増・微減だから、不安定性の増大を感じさせる。それも道理で、格付け機関のフィッチが、スペインの国債を格下げしたそうだ。で、格下げをされて何をするかというと、みなさん緊縮である。ケインズ合成の誤謬」を地で行くような話だ。空売り規制もね。どうもヨーロッパは再起不能だという気がしてきた。人種差別の嵐が吹き荒れるのも、時間の問題か。けっきょくナチスにしても、10年間で2度も全財産が消滅する(第一次大戦時のハイパーインフレ/引き締めと、大不況)のを経験したドイツ市民が生み出したものだ。EU市民も、激しい金融危機にさらされれば、似たような行動に出るのだろう。

アメリカでは、iパッドの発売にともなって、アップル社の時価総額マイクロソフトのそれを抜いたことが話題になっている。ハードもソフトも、というアップルの方針が、ここへ来て奏功した、ということか。ただ、ここから先、今回の成功を再現するようなヒット製品を出すことは容易ではないだろう。とりあえず1990年代の遺恨を清算した、ということか。

ギリシャ危機がただちに日本でも発生するとは思わないが、それは日本の国債が国内で消化されているからだ。今年あたりからそれが怪しくなるという話もある。もっとも、私は今後数年のトレンドは株・不動産の「日本買い」だと思うので、そうなれば問題の表面化は先送りされる。だいたい5年後から、日本が諸外国に「国債を買ってください」をやって亡国への道を歩み出すのだろう。仮に実現しても消費税10%は焼け石に水、にしかならない。

福島瑞穂党首罷免。これで彼女は殉教者となった。どう見ても、彼女の言っていることのほうが筋が通っている。最初から無理そうなことを実現すると言って、いざ実現しないとなると「実現させろ」と迫る閣僚の首を切る。鳩山由紀夫は本当にいいことなしであるな。誰か身体を張って、「総理のおっしゃっていることは無理です」と伝えなかったわけで、民主党中枢は本当にどうしようもない。あるいは、伝えても強引に無能方向に突っ走っていったのだろうか(私はそう思っている)。ここからの展開はきわめて興味深い。特に、沖縄の世論である。鳩山は福島を切ることで、沖縄を切り捨てたのだ。戦後日本の沖縄に対する本音が、これで露わとなった。次の一手は沖縄から、である。

これはけっきょく、首相だけでは安保体制はどうにも変らないということでもある。両国外相・防衛相の合意枠組み「2+2」のほうで、粛々と事態は進行してしまったのだ。ここでも、憲法の事実上の書き替えが起きているのか。

アメリカの景気回復にとって最大の重しは、あるいはメキシコ湾の原油流出事故かもしれない。見るからに「アメリカの未来に漂う暗雲」なので、投資家心理に与える悪影響は相当なものだと思われる。一般的不安 Generalized Dread をもたらす、バブル末期に必ず現れる、市場とは関係のないバッド・ニューズというわけである。