米、悲観ムードへ?

昨日のダウは,一時は186ドル下げたものの、回復して最終的には67ドル下げた10444ドルに落ち着いた。ヨーロッパの主要市場に比べれば、それほど深刻ではないが、「過去12日間で9日目の下げ」など、glass half empty 式の記述が広まりつつある悲観論を反映していて興味深い。
ついでにいえば、サブプライム危機も克服されたわけではなく、いよいよ本格化しつつあるようだ。今年1月から3月にかけて、住宅ローンの支払いが一度でも遅れた者は、全住宅ローン債務者の1割に達したのだという。前年同時期が9・1%だったというから、昨年3月から続いていたはずの回復は、幻でしかなかったことになる。
先行きが不況であるということがようやくわかってきたのか、久しぶりに金が下落した。20ドル安い1192ドルである。いっぽう、原油はちょっと戻して71ドル。だが、ここから100ドルへまっしぐらということは、まずないだろう。

トルコとブラジルのイラン核開発疑惑の妥協案は、アメリカにはねのけられてしまった。ヒラリー訪日中に、これはひっくり返るのではないだろうか。前回、ヒラリーがアフリカを訪れていた際には、彼女の夫のビル・クリントンもと大統領が北朝鮮を訪問している。ヒラリーは怒っていたなぁ。

そのヒラリーは今日訪日する予定なのだが、日本側が彼女を満足させられる回答を準備しているとも思えない。それとも、口蹄疫で牛を埋めている宮崎県の広大な地域を海兵隊の基地にしようとでも提案するつもりなのだろうか? ただ、私の見たところ、鳩山政権が最終的に目指しているのは安保破棄か、少なくとも米軍の日本国外への撤退なので、ヒラリーが激怒するというのが、今回最も望ましい結果なのかもしれない。

欧州市場が大きく(英、独、仏とも2.5%以上)下げたのは、ドイツが空売り規制を宣言したからである。問題というか、面白いのが、ドイツがこの決断を他国といっさい相談せずにくだしているという事実だ。ヒトラー電撃戦にあやかった、などという論調も出てきそうだが、単純に他の欧州主要国の首脳が投機筋によって「汚染」されているという判断があるのではないだろうか。じっさい、そうなのだから仕方がないのだが。だが、その不信感はユーロ圏にますます深い亀裂が走る要因となるであろう。ついでにいえば、ドイツの一方的な行動は、周辺諸国の間にそうとうな不信感を呼び起こしたはずだ。もう、終わりが見えてきた。

欧米の中央銀行が寄ってたかってユーロを買い入れるという観測が出たもよう。いずこの中銀のスポークスマンもコメントを控えている。
この場合、ドルでもってユーロを買い支えても、たかが知れている。しかも、ここ数日の欧州株式がユーロの下落を受けて好調だったことからもうかがえると思うのだが、アメリカに対してEUの競争力がせっかく高まって来たところで、強いユーロ・弱いドルをもたらす政策が受け入れられるとも思われない。
ECBとしては、ここは一つ、金の大量放出というのがよいのではないだろうか。ドルはどうせボロボロなので、この場合、基軸通貨としてユーロの最大のライバルは、実は金なのである。あるいは、その見通しに立って、金は下げ始めたのかもしれない。

バンコク炎上(というほどではないが)は、感慨深い。つい最近も、伊勢丹裏の新しいホテルに泊まっていたのだ。一拍だけ、だけど。そして、伊勢丹の入っているセントラル・ワールド・プラザ(旧ワールド・トレード・センター)は、バンコクに行くたびに訪れていた。だだっ広い、超巨大ショッピング・センターである。
ここで肝となるのが、バンコクの地理である。今回、赤シャツ団が占拠していた一角は、高級ショッピンング・センターや高級ホテルの他にも、王立競馬場やアメリカ大使館、アメリカ大使館員宿舎、ルンピニ公園などが集まる最高級エリアなのだが、実はここは小説/映画『闇の子供たち』の舞台になった怖いスラムから、そうとう近い。原宿と歌舞伎町、というよりは、原宿と代々木、くらいの距離感なのである。赤シャツのデモが収拾がつかなくなったのは、デモの騒ぎがスラム街の住民たちの日常的な鬱憤と結びついたからなのである。これは長くたたるのだろうな。