ユーロの可能性、アメリカの悲観論

ドイツ銀行CEOのアッカーマンに続いて、ドイツ二位のDekabank のチーフ・エコノミストも、ギリシャの債務返済能力に対する疑問符をつきつけてきた。吝嗇なドイツ人の本音がついに噴出した形である。ここは何の問題もないふりをして市場を落ち着かせるのがドイツ金融界の役どころのはずが「俺の金はどうなっちまうんだ」という不安が強すぎて、言わなければよいようなことを口走ってしまったという形である。
ギリシャの場合、ユーロ圏にとどまっている限りは、確かに為替切り下げも自由にできず、低成長を強いられることになるから、借金の返済は難しいだろう。緊縮財政そのものが低成長の原因となるという問題もある。
だが、ユーロ圏には一つ、強力な資産がある。金の準備高がユーロ圏全体ではアメリカのそれの10倍くらいあるのである。金の価格が高騰している今日、この点を強く押し出せば、ユーロ危機は止まるはずだ。暫定的な危機脱出策として、ユーロを金にリンクさせると宣言するというものも考えられる。ユーロ紙幣の発行残高からすると、実は現行の金価格でユーロを兌換紙幣かすれば、まだまだ紙幣増発の余地はあるはずなのだ。
だがまあ、ドイツ金融界の身も蓋もないものいいから明らかなように、ヨーロッパ人の多数は、そこまでしてユーロを守る気はないものと思われる。ユーロ圏は全体として貿易では黒字をはじき出しているわけだし、金もたっぷりあるし、強力通貨になる可能性は十分なのだが。要は、政治的意志が不十分だったということなのだろう。

いっぽう、金が返せそうになりギリシャは、最後っ屁じみた行動に出そうである。パパンドロウ首相が、財政危機を悪化させた責任の一半をウォール街に負わせようとしているようなのだ。ゴールドマンなどに対して訴訟を起こすのだろう。場合によっては、刑事もあり、なのだろうな。ヨーロッパの法廷で争えば、かなり勝ち目はあるという気もする。

そして、ユーロが沈みかかっているのを横目で見て、アメリカも浮足だって来ている模様である。AP通信の解説記事で、「回復への疑念が株価を押し下げる」というものが出てきたのだ。これを読んだディーラーや機関投資家がどう出るか。今週も、波乱というか、危機含みの展開となりそうである。