IMFからギリシャへ4兆ドル、ドイツはとどまるか?

IMFの理事会がギリシャ救済融資として400億ドルを承認した。これでいちおう、5月18日の国債償還には間に合うものと思われる。週末中、オバマ大統領がギリシャ危機に対する懸念を表明していたのが、スピード決断につながったのだろう。
そして、EUも独自の救済案をまとめた。欧州通貨安定基金、なのだとか。これで何とか乗り切れるだろう。
だが、いっぽうではドイツの上院(州代表議院)選挙で与党は敗北を喫している。ドイツはちゃんと、ギリシャ救済の融資を敢行できるのだろうか? 
と、まあ、のっけから不安の漂う週明けである。私の予想はIMFの厳しい融資条件を、今度はギリシャ側が拒絶するというものだ。ただし、それを予想して、IMFが条件を緩くすることも考えられる。ラテンアメリカや東南アジアは、ヨーロッパ末席の国を救済するための特別措置に、さぞかし怒るだろう。
だが、そうすると、今度はポルトガルとスペインの危機が浮上してくる。そちらも救済するのか? 
できるのか? 
ギリシャで怒っているドイツ人は、その他の地中海諸国を救済するという案に対しては、さらに怒るだろう。IMFが融資の条件を緩めるのも、今度は他の途上国の抵抗に遭いそうである。ユーロ防衛基金も、その時には尽きていよう。だが、ギリシャが救済されているのに自分たちは救済されないとなるのであれば、スペインもポルトガルもユーロを脱退せざるをえないだろう。そうでもしなければ、民心がおさまらない。
というわけで、ユーロの下降は続くのである。
ではIMFギリシャ救援を決めたことで、ダウは回復するのだろうか?
これはかなり疑問である。確かにゴールドマン・サックス社も証券取引委員会とは和解を模索しているのだから、不安のタネは摘まれつつあることになる。だが、今は全般的不安(general dread)が広がりつつある段階であるようにも思われる。こうなると、何をしようと人はリスク資産を購入しない。あるいは、売却して現金や金(1200ドル突破!)へと乗り換える。
果たして、平常状態に復帰できるのか、全般的不安の淵へと沈むのか。これが、今週のテーマだ。そして再来週の頭に、ギリシャ国債償還がやって来る。

(続報)
ユーロ安定基金は6000億ユーロという話と、5000億ユーロという話が出ている。これは、だいたいPIGSの政府債務をまとめてカバーできる金額だ。ただ、危機に陥った国々のいずれも、通貨切り下げは出来ないわけだから、ずっとデフレ不況で苦しむことになるだろう。ユーロ脱退の声は、いずれにせよ高まるのだろうな。
ところで、ユーロを救済することで誰が救われるかというと、けっきょく為替リスクがないことで調子に乗ってユーロ圏内で貸付を伸ばしていたドイツとフランスの銀行なのではないか。
そのドイツでは、深刻な銀行危機が潜んでいるという話も、一か月ほど前に、ちらと流れたことがある。
でもまあ、「ギリシャの悲劇」(まあ、悲劇でも何でもないと思うのだが)は、いちおうの幕ということのようだ。

あと、気になるのはポスト万博の中国であろうな。上海周辺の調整はやむをえないような気がする。ただ、上海の場合、市民は穏やかで従順であり、しかも警察もかなり真面目なので、デモとかに発展する可能性は低いように思う。