ダウ大幅下げ

ダウは一時1000ドル下げて10000ドルを割り込み、最終的には前日比で348ドル(3.2%)下げた10520ドルで落ち着いた。これまで2%の上下動で大騒ぎしていたのだから、これは立派な暴落である。原油も77ドルまで下げた。
この後、アメリカ政府があわてて株価回復策を打つ可能性というのもなきにしもあらずだが、どうだろうか。
ユーロ危機の根底にあるのは、政治である。経済面ではリーマン・ショックの後で大胆な手を打ったが、これ以上何かしようにも、政治的な限界にぶつかってしまっているのだ。
ギリシャでは、緊急融資を受けるために政府が緊縮政策をとろうとしている。ここ数年間、政府が大盤振る舞いをしてきた後の緊縮だから当然の成り行きなのだが、これに国民が猛反発して、公務員はゼネストに突入し(もっとも、ストライキと言ってももともと働いていないも同然の連中だと思うのだが)、暴動が発生、銀行員が3名死亡している。
いっぽう、これがユーロの危機であり、2、3兆円の融資など痛くも痒くもないはずのドイツだが、血税を怠惰なギリシャ人(イタリア人、スペイン人、ポルトガル人)の救済に使うのはまかりならんという世論が沸騰してしまった。間の悪いことに、今週末には地方選挙である。しかも景気は現実的にはよくないわけだから、与党が大勝できる環境でもない。
つまり、政治的な理由から緊縮も難しいし、融資も難しい中でのユーロ救済劇なのである。この問題は、この先悪化することはあっても改善されることはないであろう。
いっぽうのアメリカだが、昨日の暴落を受けてオバマ政権がウォール街を必死で守る行動に出るかというと……それはないであろう。ウォール街を懸命に支えてきた挙句に、ここへ来て変調が始まっているわけだし、ここで金融界に屈したように見えては、秋の中間選挙が危うくなってしまう。ということで、粛々とゴールドマンを叩き、金融規制改革を進めなくてはならないのだが……それって、金融引き締めと同じ効果を持つのだよな。
最後に一言。昨日、原油はだいぶ下げたが、金はほとんど動いていない。まだオンス1150から1200の間をうろうろしている。これが確定的なトレンドとも思えないのだが、株からキャッシュと、リスクの少ない形に資産を変えていく過程で、ユーロやドルといった通貨の価値の安定性にも、一定の懸念が出てきているということだろう。ただし、ここから先には不況が待ち受けているので、金も最終的には値を下げるはずなのだが、二大通貨に対する安心感が蒸発しているということは、先々の展開で重要だと思う。