ゴールデンウィークの週末明け

当然、何のニュースもありません。
ということで、笑っちゃったというか、暗澹としてしまった最近の本を。

下流大学が日本を滅ぼす』 三浦展 ベスト新書(KKベストセラーズ

ベスト新書という枠組み自体が残っているのかどうか、定かではないのだが、『下流社会』で有名なマーケターの著者の語り下ろしである。話しなれている人なだけに、普通に書いているのより読みやすいかも。データが少なく、ケース・スタディーが多いのもよし。

要は少子化が進んでいるのに大学進学率も上がり続け、ついに一学年あたりで50パーセント超が大学に行くようになった結果、大学が崩壊しつつある、という話。「そりゃ、ニートになるよ」みたいな人たちを量産しつつあるわけである。大学経営を成り立たせるために、大学は教育機関ではなく、ファミレスかと見まごう、完全なサービス三ぐ要と化している、と。
まあ、常識の範囲内の話というか、だいたいは想像がついているわけだが、それでも改めて(2008年の本なんですけどね)新書一冊分でも一つのまとまりとして読むと、空恐ろしいものがある。
著者の提案は「大学進学率を20%まで下げる」「専門学校と高校を合わせた『職業大学』を作る」「インターネットで大学の講義は日本中どこでも受講できるようにする」など、傾聴するべきものが多い。

私が見たところ、この「下流大学」問題、国としても失業率を偽装するために学生数を増やしてきたということはあるのだろう。無理して子供をろくでもない大学にやって資産を減らす親がいて、子供は失業者予備軍にしかならず、そうした形でしか成り立たない大学で教授をやっている2流3流のインテリだけがいい思いをする(まあ、時限爆弾のうえに乗っかっているようなものなのだが)という仕組みだ。ついでにいえば、本書で描かれる「下流大学」の「下流学生」(この「下流」というのは上昇志向がない、努力をしない、易きに流れるのでどんどん没落していく、という意味で、単に「貧しい」、という意味ではない。三浦の造語である)は、ブルーカラーとしては中国をはじめとする新興国の労働者やロボットとの競争に勝てず、事務処理能力ではパソコンに劣り、かといってビジネスモデルや特許を新たに生み出せるだけの頭脳があるわけでもないという層であろう。つまり、労働市場に投入されれば、どこにも行き場のない人たちである。なんとわかりやすい話であることか。
「労働力として市場に受け入れられない人たちが下流大学におさまって失業統計として顕在化することを先送りしている」
これだけなのである。失業問題は4年遅れで発生する!