トヨタ危機は続く、日米関係は?

アメリカの連邦レベル、州レベルで、トヨタは合計327件の訴訟を抱えることになりそうだ。これは、確かに痛い。というか、面倒くさい。場合によっては経営危機に陥ることもあるだろう。『新潮45』の4月号のコラムで「トヨタ叩きで困るのはアメリカである」と断言した身としては、ちょっと困る。
だがまあ、このままトヨタが潰れても、やはりアメリカは困るのだ(あ、コラムの論旨そのままだ)。日本がアメリカとくっついていなければならない最大の理由が、トヨタなのだから。そのトヨタにとって、アメリカでビジネスをすることの費用が便益を上回れば、アメリカは日本にとって、いよいよどうでもよくなってしまう。そのあたり、アメリカとしてはろくすっぽ考えていないのだろうな。

で、その日米関係だが、鳩山首相普天間入りするのに先立って、水俣病患者の集会に出席して首相として正式に謝罪している。日本の首相がやり残したことをやっているわけで、何やら悲壮感が漂っているではないか。これを見ると、なかなか立派な総理大臣ぶりである。いったい、普天間訪問に何を見ているのか、不思議になってきた。

情報誌『選択』の最新号が届いたので、その鳩山氏の対米政策のでたらめさについて、苦々しい「特別レポート」を巻頭で掲載している。かつては大臣がそのまま所信表明演説に使うこともあった『選択』巻頭記事だが、最近ではアメリカ右派というか、アメリカ共和党右派の下請けの日本人が書いていると思しき中身の貧しさ、品のなさだった。そしてこの記事も、その下請け氏のものなのだろう。いかに鳩山氏の迷走と思慮の浅さ、素人臭さがアメリカを不快にし、日米同盟を損ねているかと、嘆くことしきりである。
しかしね! ここでこの下請けさんが見落としている(そして、アメリカ側も完全に見落としている)点が一つあるのだよ!
もしも鳩山の目標が安保破棄だったら、どうなのだ、と?
アメリカに怒らせるのが、いちばん後腐れがなくはないだろうか?
その場合、今のアメリカにとって唯一本当に頼れる同盟国(自国の国益よりも同盟条約の文言のほうを優先させてくれそうな気配が濃厚)である日本が、ちょっと態度が気に入らないからって、日本の首相を馬鹿呼ばわりするというのは、いったい何事だろう?
どうもアメリカは、日本の術中に、はまってしまっているのではないか。そんな気がしてならない。詳しくは、5月半ばに出る『新潮45』で読んでいただきたい。『選択』は読まなくていいから。

その『選択』の同じ号で、面白い記事が一つ。ラリー・サマーズ・ホワイトハウス経済顧問(だったか?)が更迭間近だという話だ。これは、かなり信憑性が高い。我が強いし、クリントン人脈だしね。ただ、エマニュエル首席補佐官もガイトナー財務長官もサマーズとは関係なくホワイトハウスに残ると、漠然と考えているあたりが、分析が浅いか。ガイトナーは人畜無害なので残せるなら残すだろうが、あまりの押しの強くさに敵を増やしており、特にオバマと近いわけではないエマニュエルも、けっこうホワイトハウスを出る(もっとも、おそらく栄転という形で)日は近いと思うのだが。