ダウ大幅落ち、いよいよ危ないヨーロッパ

一昨日(アメリカ時間で昨日)には、ダウが大きく下げていった。ギリシャ国債のジャンク化が嫌気されたという解説だったが、ゴールドマンの上院審問も、実は響いているのではないだろうか。もっとも、ウォール街人種はこの審問、無関心らしい。「市場が解決してくれる」と信じているのだろうな。政府が全力を挙げて「お前はろくでもない奴だ」「お前のことは嫌いだ」と宣言しているわけだから、マイナスの広報効果は測り知れず、金融機関にとっては致命的だと思うのだが。ついでにえば、一昨日の当ブログで書いた通り、超強気の予測が出てきたことと、何やら繋がっているようにも見える。
何度も繰り返してきたことだが、バブルというものには値上がり期待を支えるシナリオが必要だ。だが、今のアメリカにはそれが存在しない。「超低金利が続く限り、お祭りを続けよう」という程度の、やけっぱちな心情だけなのである。もっとも、御当人たちはこれがやけっぱちだとは思っていないのだろうが。だが、それでは回復はきわめて脆弱なものとなるであろう。脆弱、脆弱と言われつつも、一年以上も回復が続き、リーマン直前の水準の八割を超える水準まで戻しているのは、オバマ政権も欧州諸国の政府も、あるいは各国の中央銀行も、脆弱さを理解して、壊れ物を扱うようにして経済を運営してきたからだ。
それが、「あえて壊す」に転じたのが、今回の金融規制/ゴールドマン詐欺騒ぎである。金融危機が起きたから、「二度とこういうことが起きないように」規制をしようというのだが、ゼロ金利の傍らこれを進めることには無理がある。というのも、「無謀な貸しつけをさせない」「金融機関の規模に制限を加える」というのは、金融引き締めと同じ効果を持つからだ。金利が0・25ポイント上がるだけで大騒ぎなのに、規制の一つひとつが金利換算で何パーセントに該当するのかは、誰も気にしていない。不思議な絵である。
そして、ヨーロッパである。こちらは凄い。PIGS懸念が本格化しているのである。ギリシャ国債がジャンク、ポルトガル国債引き下げと来て、ドイツ首相がECB総裁、IMF総裁と会合を持つことになった。ついに、ドイツは折れ……たかに見え、ダウは一時、劇的な回復を見せる。よく文言を見れば「ドイツも負担するが、ギリシャも負担せよ」というもので、その負担をする文化がないのがギリシャ人だから、これは時間稼ぎでしかない。
ドイツも地方選挙が5月にあるというわけで、国内世論を優先させざるをえない。ギリシャ人に本格的に苦痛を感じてもらわないことには、金は貸せないというのが本音だろう。ところが、ドイツ人が見てわかるような「痛み」をギリシャ人に強いれば、大暴動どころか、内戦である。すでにギリシャ空軍は給料削減に抗議してストに入っているのである。こうした運命的な危機を予感させつつ、それでも市場はメルケル、ECB、IMF会談の結論を好感した。
ところが! その直後にS&P社が、今度はスペインの国債格付けを引き下げたのである。当然、市場は反落した。
その後もみ合った挙句に、前日比0・5パーセント増で幕は引けたのだった。だが、PIGS危機は冗談ではなくなってきた(「破滅博士」ことヌリエル・ルビーニNY大教授は「四、五日すれば、ユーロ圏なんてなくなっているかも」などと大放言をする始末。だが、この人の放言はかなり当たるのだ)。しかも、ゴールドマンの審問はどこまで進むかわからない。それを乗り越えた後の金融規制改革が市場に与える影響もわからない(というか、きっと悪い)。
いよいよ、バブル崩壊の第二幕が開かれたようだ。