上院委員会、ゴールドマンを批判。いっぽう、超強気の論調が登場。

連邦議会上院の調査恒久委員会、レヴィン委員長はゴールドマンが市場崩落で大儲けする戦略を立てていたと発言。はっきりと非難を帯びた口調のようだ。いっぽう、ゴールドマンのブランクファイン会長は「株主の利益になるよう行動していただけ」と応酬。実はこれ、どちらも正しいのである。問題は、ゴールドマンが株主ではなく一般顧客の利害をどこまで考慮していたか、ということだろう。それについては、「?」とせざるをえないのではないか。まあ、上院の公聴会というのも、どこまで破壊力があるかは不明である。かつてBCCI(国際信用商業銀行)事件というものがあったが、これも詳細はうやむやになってしまった。ちなみに、時の大統領はブッシュで、もとCIA長官という職歴の持ち主である。BCCIは「犯罪の総合商社」などと呼ばれたものだが、実はCIAの裏金洗浄・運搬機関だった。そして、追及を中途半端なところで終わらせたのは、ブッシュと同じエール大スカル&ボーンズのOBで、2004年の大統領選でぱっとしない戦いぶりでブッシュ・ジュニアの再選を可能にしたジョン・ケリーだった。
まあ、レヴィン委員長、そうとう率直な人らしいので、そこまで悲観したものでもないのだろうが。

さて、リ=バブルのほうだが(底からリバウンドしてきただけのバブルなので、こう呼んでいる)、こちらはそろそろ危険水域に突入した模様。というのも、「S&P指数は、2010年に3000に到達する!」と買い待ちを勧めているご仁が、アメリカのテレビに登場したからだ。ジョン・マークマン。かなり高評価を得ている投資アドバイザーらしい。
「今回の景気刺激は空前の規模。S&L危機のあった1990年代初頭にも大規模な刺激策が講じられ、S&Pは5倍になった。今回だと、たぶん3000くらいまでいくのではないか」
ちなみに、昨日のS&Pは、前日比0.43%減の1212である。2.5倍か……。3000というのは、むしろダウの行き先としてありそうだと思うのは、私だけだろうか。
とにかく、こうした超強気の論調というのは、非常に不吉なものである。バブルの初期には、現実を見る目を曇らせるような論調がはびこる(日本のバブルの場合は、野村証券の一面広告「パラダイム・シフト」で、アメリカのITバブルの場合は「ニュー・エコノミー」だ)ものだが、末期には具体的な数字でもって、煽りたてるようになるのが、過去何回かの例なのだ。
たとえば、ITバブルの末期症状を現す本として有名な、ジェイムズ・グラスマンとケヴィン・ハセットの『ダウ36000』。これが出たのは、1999年10月1日と、まさにITバブルが崩壊する直前である。
ところが、これで金融マスコミはこりなかったようで、21世紀に入ると『2008年までにダウ30000』という本が登場。著者は、ロバート・ズッカロとある。興味深いのは、初版が出たのは2004年1月1日と、わりと好タイミングだったというところだろうか。まさにサブプライム・バブルが動き出したあたりなのだ。
ところがこの著者、増補改訂版を刊行。そのタイミングが泣かせる。
2008年12月1日なのである。サブプライム・ショックで世界中が青くなっている、最暗黒の日々ではないか。リーマン・ショックと「底」の、ちょうど中間の日なのである。このタイミングで本が出たということは、脱稿がちょうどリーマン・ショック前後だったわけで、「すぐに回復する」と強引に自分を信じさせたのだろう。出版社の担当者たちの青くなる様が目に浮かぶ。
というわけで、『2020年にはS&P3000』、まだ本になっていないけれど、記憶されるべきタイミングと数字になるのではないか。まあ、そうならないほうがよいのはもちろんだが。