ダウは+で。

先週末のゴールドマン提訴で、世界の金融市場に激震が走ったわけだが、明けて月曜日、ダウはなんと黒字で終わった。シティバンクの業績改善が好感されたよし。
ゴールドマンは、詐欺容疑について「事実無根」として反論、徹底抗戦の構えを見せている。オバマ政権も改革者として歴史に残るかどうかという瀬戸際で、たぶん引かないだろう。ゴールドマンの商法がどういうものだったか、詳細はわからないが、1990年代後半からアメリカで二回起きた巨大バブルの胴元だったわけで、その気になればいくらでも触法行為は発見されるだろう。また、ルービン、カード(ブッシュの首席補佐官)、ポールソンと、政官界の中枢部に人材を送り込んでいたことから、癒着疑惑が発生する可能性もある。政府が本気になれば、どんな大企業であっても会社をつぶすくらいはわけがなく、特にゴールドマンの場合はきわどい信用商売であるからして、政府に「詐欺だ」とか言われれば大いに困ることは必定である。
では、ゴールドマンとしては、しおしおと容疑を受け入れるのか? それも自殺行為というものだろう。今度は株主からも提訴されかねない。ということで、政府に対して「俺たちに手を出したら、どうなるのかわかっているんだろうな」というメッセージを送るのである。
そのメッセージは、まず間違いなく、政府が株式を大量に保有し、その黒字売却がオバマ政権の金融政策の正しさを立証していた形のシティの惨憺たる(たぶん)内情を暴露し、道連れにすることである。
どこの国でも金融界にはマスコミに出ない裏事情は、常に噂として飛び交っているものだが、ゴールドマンのトップ・エリートたちにしてみれば、シティの中身がどこまで腐っているのか(私は知らないが、たぶんそう)なんて、裏の裏まで知っているだろう。だいたい、ゴールドマン育ちのルービンが、シティの共同会長だったのだ。
全米最大の銀行であるシティが破綻すれば、それこそ大不況の再来だから、オバマ政権としてもバックオフせざるをえないだろう。ゴールドマンとしては、そう計算してリーク作戦を開始するのではないか。だが、オバマ政権が「金融パニックが起きても、イランとの和解でドルの価値を維持する」という戦略でいた場合、シティいじめは戦術として無効となる。米イラン関係は、中東政治というよりは、今や国際資本主義の行方も決定する問題となりつつある。