やはりインフレが……

ダウ11123で、ウォール街が採用を増やしているというニュースが入ってきている。ドルは円とユーロに対して微増だ。そのいっぽうで、原油86ドル、金オンス1159ドルだから、もはやインフレ基調も鮮明になりつつあることになる。ついでにいえば、アメリカ全体としては雇用が弱いとのこと。
必死の努力を重ねてきたチーム・オバマとしては、ここまで回復したのはけっこうなことだが、バブル水準を維持するには、依然として成長シナリオがないままである。インフレ懸念から利上げというのは、避けがたいようだ。
いっぽう、中国の対イラン制裁への同調だが、中国は御存じのとおり原油の二割をイランから輸入している。そしてイランは中国に背を向けられる直前に、ウランの濃縮実験を始めるなど、核開発をさらに一歩進める強気さだ。対決姿勢を強める、精神状態の不安定な友人のそばから、中国はさっさと逃げ出した、ということだろうか?
例によってうがち過ぎ、という批判が出るのを承知で言えば、イランとアメリカの和解が近いからこそ、こうした対決姿勢が出てくるというのが、私の理解である。近日発売の『新潮45』最新号(18日発売)でも書いているが、内憂外患のアメリカにとって、イランとの和解はあまりにメリットが大きい。地球の裏側にあるアフガニスタンの麻薬ゲリラよりも、お隣り(時には自国内)メキシコの麻薬マフィアのほうが、よほど緊急度が高いのだ。麻薬戦争のおかげで、メキシコはこの5年間で2万人以上が命を落としているというデータまで出てきているのである。イランと和解すれば、イラクもアフガンも、とりあえず放り出すことができるであろう。だが、それには一度緊張を高めて、周りから「まあ、まあ」となだめる声が上がらなくてはならない。そこへ向けての芝居ではないのか。