ギリシャ危機はいったん回避……か?

ユーロ圏の蔵相会議が、債務危機で揺れるギリシャに対して300億ユーロを融資する合意に達したようだ。金利は5%で、ギリシャ国債の市場金利よりは低いが、IMFなどの融資の標準よりは高く設定してある。ギリシャにパンクされても困るが、かといって厳しくする姿勢を見せないと、ギリシャ以外のユーロ圏諸国の有権者が怒りだしてしまう。IMFも100億ユーロの資金出動を準備しているとのこと。
これで危機は回避されたのだろうか?
今年中にギリシャが返済しなくてはならない債務は500億ユーロを超えている。だが、いくら財政支出を切りつめても、黒字に転換するかは怪しく、しかもギリシャはすでに政情不安である。今、ギリシャがユーロ圏諸国から資金を調達したとして、それでは来年はどうなるのか? 
それどころか、今年をちゃんと最後まで乗り切れるのか?
こうした不安が発生するのを、抑えることはできまい。
今回のユーロ圏諸国によるギリシャ支援は、ギリシャ政府が支援を請求した場合に発動されるとのこと。だが、支援請求がきっかけで大暴動が起きたら、どうなるのだろう?
しかも、イタリアではヨーロッパ一の無責任男、ベルルスコーニが選挙で大勝している。ギリシャがうまく収まれば、次はイタリアが巨額の資金援助要請をしてくることが、目に見えている。そういえば、1992年にはリラ危機などということもあった。ヨーロッパ通貨機構からイタリアが脱退せざるをえなかったのだ。そして、その結果登場したのがベルルスコーニだった。時計の針が盤面を一周したと言おうか。とにかく、イタリアが今回のギリシャのような事態に陥れば、ユーロは完全に崩壊である。EU事態も、もつのかどうか、わからない。
ただし、ユーロ崩壊が国際経済に凄まじい波及効果を及ぼすかどうかは、やや疑問である。ユーロ圏は全体として黒字も赤字もそれほど大きくない。巨大債務国アメリカとは事情が違うのだ。

いっぽう、「微笑みの国」タイの政情不安は悪化するいっぽうとなっている。警官隊とデモ隊が衝突して、死者は20名に達した模様。対立の根っこにあるのは、かつてのタクシン政権が農村人口の期待を大いに上向かせた事実である。そのままタクシンが失敗するのを待てなかったあたりに、タイのエスタブリッシュメントの焦りがあった。アビシット政権は農民層に対して歩み寄るような政策をしきりに打ちだしているが、それでもこれだけの騒ぎになったのである。平和裏の解決は、不可能なようだ。

中国は人民元切り上げの方向に動いているようである。けっこうなことだと言えよう。これでアメリカの貿易赤字が減るとも思えないのだが。
中国としては、日本が万博の後で円を切り上げ(ニクソン・ショックという形で強制的に切り上げさせられたのだが)、その後10年かけてハイテク国家へと成長したひそみに倣いたいのである。だから、切り上げのタイミングを上海万博後の10月だと言っている。アメリカ側が、トヨタ問題の場合と同じく「敵を押し切った」と、今回の切り上げを見做しているとすると、とんでもないサプライズに見舞われるかもしれない。

日本では平沼新党「立ち上がれニッポン」が、少しだけ話題になっている模様。参院選の公約で消費税率10%を唱えるらしいが、これは自殺行為である。早くも与謝野に乗っ取られた形だ。まあ、増税論議が表に出てくるのはけっこうなことだが(とはいえ、10%ではまるで足りないというのは、かねて主張しているところ)。

いずれにせよ、今週も波乱の一週間となりそうである。そうそう、アメリカでは今年に入って42件目の銀行破綻が起きている。月10件のペースを上回っており、昨年よりも急ピッチかもしれない。