(5日おいて)歴史の分岐点?

先週だけでダウは500ドルほど下げている。ついにオバマ・マジックが切れて、悲観論が台頭してきたということなのだろう。オバマが「輸出を5倍に」などと妄想としか言いようのないことを(レーガノミックスとどっこい)言っているのも、マイナスだ。
経済がおかしくなるとともに、対外政策面での混迷も凄まじい。アメリカは台湾に武器を売却し、中国をめいっぱい怒らせるのと同時に、クリントン国務長官が、イランに対する国連の制裁に賛成しなければ「中国は国際的に孤立するであろう」と演説しているのである。中国にとって、イランは原油の輸入先としてナンバー3である。中国側がイランのことを好きかどうかとは別に、イランがイラクと同じ道をたどった場合、アメリカの軍事力はイラン+アフガニスタンと、中国の真裏に集結することになり、日本、韓国の米軍と合わせて、中国が前後から挟撃される格好になるわけである。しかも、原油の輸入先を変更することは、アメリカの海軍力に対する中国側の補給網の、露出の度合いを高めるかもしれない。中国にとって、よいことなしなのだ。
では、中国はアメリカと全面対決を求めるか? おそらく、それは必要ないであろう。その代わりに、ドルを売って崩壊寸前のユーロ(気がつけば125円近くまで落ちている)を大量に買い入れるのだ。ギリシャ経済の崩壊を食い止める「白い騎士」の役割を、買って出るのである。アメリカは中国の外貨準備の破壊力を思い知らされるし、中国としてはユーロ圏に恩を売り、しかもロシアの背後にいる国々を強化できる。
かつてイギリス、フランス、イスラエルスエズ運河国有化を強行したナセル政権下のエジプトに軍事進攻を行った際に、予想外にもアメリカが「ノー」と言って失敗に終わったという前例がある。その際、アメリカはポンドを大量に売って、イギリスの資金繰りを痛打したものだ。今のアメリカは、スエズ侵攻に超大国の威信を賭けて失敗したイーデン首相時代のイギリス並みに、現実感覚が弱っているのかもしれない。オバマ版「スエズ・モーメント」が大いに注目されるところである。