(二日おいて)2010年の大予言

さて、いよいよ煮詰まってきた感じである、アメリカも、日本も。
まずアメリカだが、三日続けてダウが下がり続けた結果、一時は1万1000ドルも間近という水準まで言っていたのが、今や1万172ドルだ。しかも、20日も22日も200ドル超の下げであり、月曜もその調子だと1万ドルを割ってしまう。そこから先は、2番底に向けてまっしぐら、だろう。
根底にあるのは、オバマ・マジックの種切れである。失業率が一向に改善しないにもかかわらず、リバウンド・バブルがここまで膨れ上がったのも、彼の政治家・指導者としての卓越したコミュニケーション能力によってのことだった。それがマサチューセツ週の上院補選で、否定されたのだ。これまでオバマ・マジックをあてにして従順だった議会民主党は反乱を始めており、よりにもよってバーナンキFRB議長の再任を拒み始めている。前任者グリーンスパンから、爛熟を超えて崩壊に向かいつつあるサブプライム・バブルを受け継いだバーナンキの大車輪の活躍のおかげで、アメリカ経済の底は抜けずにきたのだから、これは暴挙と言うほかはない。再任反対を述べている議員たちの中には、もともと共和党優位の時に選ばれたバーナンキを、まさか議会共和党が放り出すことはないだろうと計算している向きもあるかもしれない。だが、共和党としてはオバマの任期中に経済がとことん悪化してくれるほうが都合がよいわけで、彼らとしても政権の柱石のバーナンキがいなくなることを歓迎するものと思われる。
バーナンキ再任が否決されれば、どうなるか? ドルは暴落するだろう。ダウも暴落するだろう。大手金融機関がどこか飛ぶかもしれない ー 何せ、司令塔がなくなってしまうのだ。その後で議会が慌てようと(すべてをオバマのせいにすればよいのだから、慌てないかもしれないのだが)、「やっぱりバーナンキ」と宣言しようと(子供みたいだ)、すべては後の祭りである。恐慌回避の最大の功労者であるバーナンキといえども短期の政治的得点稼ぎの犠牲になりうるとわかった時点で、投資家はいっせいに守るに入るであろう。
いっぽうの日本である。といっても、実は日米関係だ。沖縄・辺野古の基地反対派の勝利には、背景がある。先週、亀井金融大臣が「沖縄にカジノ特区を」と、やらかしているのである。基地がなくなっても大丈夫ですよ、というシグナルを発しているのだ。しかも、亀井の背景には無制限融資をあちこちで約束していると思しきゆうちょ銀行が控えている。加えて、カジノとくればヤクザ、ということで、沖縄の地下社会も盛り上がっていることだろう。「ヤンキー・ゴー・ホーム」の大デモが、春に向けて何度となく起こるのではないか。そして5月に普天間問題は解決せず、怒った、というよりはうんざりした(in disgust というやつだ)アメリカ大使が「日米安保の死」をつい宣言してしまう。そういう、相手方に縁切りをさせる道を、日本は選んだように思われる。
安保がなくなっても大丈夫と日本側が判断している根拠だと私が考えるものは、先週の日曜日にこのブログで書いている。バランス・オブ・パワーの問題なのだ。日米vs中よりも、日中vs米のほうが、戦争が起こるリスクが低いのである。ただ、今の日本にそこまでの深謀が働いているとも思えない。安保継続の最大の理由となっている北朝鮮との関係で、大打開が近々あるのではないか。も少し具体的に言うと、2月に鳩山訪朝が実現するのではないか。そして、それをもって拉致問題は解決を宣言される、誰が何と言おうとも。
おそらく、検察が小沢潰しに躍起になっているのも、このような動きが察知されてのことだ。だが、小沢潰しの背後に誰がいるにせよ、肝心な点を見落としている。
鳩山は無能だが、小沢の操り人形ではない、という事実である。
鳩山は、自分の役不足を承知のうえで、北朝鮮との関係打開のために死を賭している。それだけの、ハチの一刺し(昔、そんなことを言った女性がいたが)のための、宇宙人宰相の登板だった。かつて岸信介が、娘婿の安倍晋太郎に「総理の仕事は外交」と言ったのは、こういう意味だった。その岸は、現に安保騒動の大芝居で、太ももを刺されている。
鳩山訪朝、安保空洞化の次に来るのは、何だろう。
実は、現在の民主党ポピュリズム劇場、フランス革命になぞらえられている。天皇軽視の姿勢に外国人参政権と、日本人の中のナショナリストを刺激する動きが次々とあるせいで、反対派は「共和主義だ」と、普通の日本人のハートにまったく届かないシュプレヒコールを上げている。
フランス革命のでたらめに飽きたパリ市民が最後に求めたのは何か?
反動だったではないか。
ということで、ナポレオンというのには、ちと頼りないが、7月の参院選では自民党反動、ねじれの再発でもって大連立、谷垣総理という運びが最も自然である。今日の政界を見渡して、総理大臣が本当に勤まり、しかも総理退任後に影響力を残せそうなのは(他の適任者はみんな死にそうなのだ)、谷垣だけなのだから、これは「まさか」であるとともに、自然な流れでもある。
そして、最後に来るのが、中国の人民元切り上げだ。改革開放路線の中国は一貫して日本をモデルにして来ており、首都でオリンピックの次は商都で万博というのも、その流れである。そして、万博の次に日本を襲ったのはニクソン・ショックだったが、ニクソン・ショックを奇貨として、日本はただの加工貿易立国から、ハイテク産業国家になっている。そして、産業の高度化とともに、公害も克服しているのだ。これこそ、中国が望んでいる結末ではないか。
ということで、年末までに人民元はドルに対して20%の切り上げ(ドルが下がる、という見方も可能である)、円に対して10%の切り上げ。
ここで年末までの予言をまとめると、こんな具合か。
アメリカでは、ダウが8000ドルを割り込む。
日本では、鳩山が北朝鮮を訪問し、「日米安保の死」が宣言され、谷垣政権が誕生する。
人民元が対ドルで20%、対円で10%、切り上がる。
円はドルに対して10%切り上がって、1ドル80円に接近する。
そして、私の持論がようやく生きてくる。北朝鮮問題が解決され、中国の日本製品の購買力が10%増すことで「東アジア平和バブル」が発生するのだ。
年末の日経平均は、だから2万円前後まで行っていることだろう。
原油は……バレル100ドルくらいだろうか。中国は国際原油市場(ドル建て)を迂回しない道を選ぶものと思われるので、あまり上がらず、ドルの価値下落だけが原油価格に反映されるものと思われるので、暴騰はないだろう。
あまり読めないのが、円に対して先週大きく下げたユーロだ。年末にユーロがなくなっている可能性も、決してゼロではないのである。ただ、日本はアメリカは救わないが、ドイツは救おうとするはずである。中国にしても、ロシアの西隣のヨーロッパが大混乱になることは避けたいだろう(ロシアが強くなりすぎる)。ユーロの先行きは暗いが、今回は日中、それにアラブの共同介入で、ユーロ瓦解は回避される。また、ヨーロッパだけを救ってアメリカは放置というのは、あまりに露骨なので、ある程度はアメリカも救済され、ドルもダウも底が抜けるところまではいかないだろう。
以上が2010年の見通しである。もう今年に入っているという文句もおありかもしれないが、私の家では新暦と旧暦を併用しているので、気持ちは半ば、まだ2009年なのだ。