ついに始まったか、2番底

昨日のダウは2.03% にあたる213 ドルと、大幅に下げている。金も1100 ドルに接近し、原油も下げて75 ドルだ。恐慌再突入モードである
笑わせてくれるのが(笑っている場合ではないのだが)、このミニ暴落、オバマ政権が「金融危機の再来を防ぐために」金融機関に対する規制を強化すると発表した途端に起きたということである。オバマがこれまで大切にしてきた金融界を(遅ればせに)罰するような動きに出たのは、言うまでもなく、マサチューセツ州における上院補選の敗北に驚いてのことだ。
ここで興味深いのは、オバマが昨21日の株価急落を、どう見るか、だろう。急落とは言っても、下げは主に午前中に起きており、昼前には沈静して、株価の動きは平坦化してしまった。
つまり、軟着陸しているのである。
この動き方は、金融界がオバマ政権に対する警告(市場操作)が含まれているからだろうか?
もちろん、この問いに対する答えはわからない。ウォール街のシグナル発信と、「リバウンド・バブル」の終局を読みとった投資家たちの手じまいの両方が作用している中で、両者の間の比率など、知りようもないのだ。
だが、オバマがどうこの株価下落を読み、中間選挙に向けて、さらには2012 年の大統領選に向けて、どう戦略を練るかについては、ある程度予想がつく。
これまでオバマは、驚くほど金融界に対して優しかった。ブッシュ政権以上に、支える姿勢できたと言ってよいだろう。これは何もオバマウォール街の走狗だということではなく、彼がプラグマチックな政治家だということを示している。オバマの支持層がいくら左だと言っても、国民全体としては金融システムが崩壊しないほうがよいに決まっているし、大統領の力は膨大な中道派(つまり、現状がよいか、よくないか、くらいの判断しかしない)の国民の支持にかかっている。なるべく現状維持の政策を、と考えるのは、政治的にきわめてまっとうな判断だった。
ところが、ウォール街は高額ボーナスを復活させることで、オバマ政権の救済に応えたのである。オバマとしては、顔に泥を塗られたと感じただろう。そこへ持ってきて、マサチューセツの敗北である。普通にいけばリベラルなマサチューセツ州で、株価回復を順調に進め、医療制度改革でも突破が可能に見えるオバマの与党が、圧勝しそうなものではないか。
それが、あっさりと負けてしまったのである。
株価よりも医療よりも(医療制度改革で、直近の受益者の数は、確かに決して多くはない)、ウォール街の Fat Cat たちがまたしてもいい思いをすることに対する怒りのほうが、一般国民にとっては重要だということが明らかになったのだ。
ここでオバマは、どう出るか?
彼は、思慮深い。昨今のアメリカ大統領とは一線を画する思慮深さである。だからこそ、ここまで金融システムを支えることに政治力を使ってきたのだ。
だが、彼はまた、政治家としてきわめて有能である。自分が生き残り、勝利するのに必要な手を打つことを、ためらう人間ではない。
そうだとすると、オバマは国民の支持に応える形で、ウォール街との全面戦争を始めると見るのが、最も理にかなっている。景気が悪化し続けても選挙に勝ち続ける方法は、他にないからだ。ついでに金持ち増税もすればいい。そして、金持ちを犠牲にして貧困層アメリカの有権者の圧倒的多数だ)を助ける政策を次々と打ち出せば、不況でも票はそれほど減らない。
ただし、議会民主党は勢力を減らすだろう。少数与党での政権運営で、しかも野党共和党が思想的にも利害の面からも激しく抵抗することが、オバマの左派ポピュリズムについては予想される。
そうなると、大統領の伝家の宝刀が抜かれざるを得ない。
戦争、である。
アフガン戦線は拡大し、ついにはイラクアフガニスタンに駐留する米軍から、イラン挟撃のための動きが出てくるのである。
アフガニスタンで連合軍兵士を殺害するタリバンアルカイダは、イラン領内に逃げ込んでいる」
このような報道が聞かれるようになるのも、遠いことではないだろう。