潮目が変わった?

昨日のダウは1.14% マイナスで、10603 ドルまで下げた。金も原油も、2.4% も下げている。株価が下がったのは、発表された収益の数字各種が悪く、中国が金融引き締めに転じたからだという。だが、もっとずっと全般的な悲観論が漂い出しているのではないか。

そう思わせるのが、マサチューセツ州の連邦上院議会補選である。エドワード・ケネディ上院議員の引退(直後に脳腫瘍で死亡)にともなって生じた空席を埋めるためのもので、容易に民主党候補が勝てそうなものだが、共和党が勝ってしまった。これで、オバマ政権の議会における安定多数は崩れてしまった。医療保険制度改革も難航が予想されるわけである。直接的な株価への影響としては、医療関連株の値段が上昇(笑)したことくらいだが、この政変はきわめて重要だ。今日まで、景気回復がまがりなりにも続き、次のバブルが育ちつつあった理由の一つ、私が『バブルの興亡』でバブルの発生要因として大きく取り上げている「期待上昇要因」は、「オバマ・マジック」だったのだから。黒人で初めて大統領になったオバマなら、その頭のよさ、政治手腕、絹のごとき雄弁でもって、アメリカ経済を再び成長軌道に乗せられる。アメリカの国民のかなりの部分(左半身)は、それを期待していたのである。そのオバマの政治手腕が、翳り始めたわけだ。

マサチューセツ補選での野党勝利は、株価は回復しても、失業率は高止まりし、成長再会の見通しが立たないことに対する有権者の不満の表れだろう。そして、すでに述べたように、オバマは景気の中折れを予想して、銀行課税を打ち出した。2番底が発生した場合、罪を全部ウォール街になすりつけるつもりなのだ。

そのオバマの選択は、正しそうである。シティバンクは昨四半期の決算が大赤字だったが、これはTARP (不良債権の救済基金)から借りた金を返済したためだった。赤字が出るのもかまわずあわててTARP に借金を返したのは、言うまでもなく、そうしないと重役に巨額ボーナスが払えないからだ。度し難いとは、こういうのを言うのであろう。強欲資本主義も煮詰まったというか、ヤキが回ったというか、毒が脳に達したというか。赤字に加えて、その理由のあほらしさが、株価下落に貢献したものと思われる。

中国の引き締めに関して言えば、上海万博を目前に控えて引き締めに出た当局の自信に注目するべきなのではないか。バブル景気が行き過ぎているということはあるにもせよ、発展途上国でしかない中国としては、先々の成長でもって過剰投資を吸収できる。だから、「中国がくしゃみをしてダウが風邪をひく」式の論法は、あまり成り立たないと思う。

とにかく、オバマの敗北でもって、リーマン・ショックの前にあったバブルへの復帰でしかあり得ない景気回復に、影が差し始めたことは確実である。