(三日おいて)平穏無事な日々

三日後、帰ってきた男は……別人だった。
などということは、ございません。風邪です。アルコール消毒は効きませんでした。

さて、1月11日のダウは0.43% 上げて10669 となり、原油は0.5% 減の82 ドル、金は1.1% 上昇して1150 ドルとなっている。新たに発表された失業率の数字が10% でも、株が大きく下げることはなかった。何が起きているのか。
英Economist 誌最新号のカバー・ストーリーは、「バブル再発」というもの。オバマ政権の手腕には頭を下げざるを得ないが、このバブル、サブプライム以上に馬鹿らしいのは、資産価格上昇を支えるストーリーがないということだろうか。まさか、「グリーン・ニューディール」を真に受けているプロなんて、いないだろうし(環境改善は公共財なので、政府支出か、少なくとも民間負担が大きくなる方向での規制強化に依存する度合いが大きい。前者は今のアメリカの財政状況では難しく、後者は共和党の反撃が激しくなるので、政治的に難しい)。おっかなびっくり、市場に誰もが戻りつつも、いつでも逃げ出す用意が出来ている、ということなのだろう。
現在、経済マスコミの関心は「中国のバブル」に向かいつつあるようだ。数日前のヘラルド・トリビューンにも二点、関連する記事が載っていた。一つは、「空売りの帝王、『次は中国バブルが破裂』」というもので、もう一つは「中国当局、バブル退治に慎重な一歩」というもの。中国政府は、手を打ちつつあるのだな。
中国、特に上海と北京の経済がバブル状態にあるのは、間違いない。一年で住宅価格が6割上昇したりするのだから。ただ、中国は堂々たる発展途上国で、過剰になされたように見える投資も、時間をかければ、そのかなりの部分を吸収していけるのも事実だ。これからバブル崩壊が起こるにせよ、1990 年の日本ではなく、1973 年、狂乱物価の後の日本のことを参考にするほうがよいだろう(福田赳夫が大蔵大臣だか経企庁長官だかに就任して「日本経済は全治3年」と宣言、引き締めと膿だしを色々とやって、本当に3年後には回復していたという危機である)。しかも1970 年代の日本は、公害問題をテコに産業の大々的な高度化に成功している。中国も、次なる危機をテコに生産性を大幅に改善し、同時に各種規制の施行体制を強化すると見るべきだろう。
それともう一つ、日本のバブル崩壊の場合、当局にとって青天の霹靂だったが、中国の中央銀行にはすでにバブルというものが何なのかが、よくわかっているということだ。万博が今年に予定されつつも、すでに金融引き締めに向かっているという点に、そこは窺われる。
ところで、中国がバブル状態にあることを示す状況証拠だが、「温州商人、ドバイ・タワーを購入」というニュースもあった。笑える話である。このあたり、ドバイ・ワールド社によるアメリカのラグジュアリー物件の購入と同じで、「バブル紳士は世界共通」といったところか。こうした有名物件の購入は、「俺もここまで来たか」という確認作業なのである。だが、それで確認されるのは、バブルだけなのだった。