すべてが曖昧なままに、週末へ

取引開始とともに急上昇を記録したダウだったが、じきに急落をはじめ、一時は前日を割り込んだ。最終的には、前日比 0.2% の微増、である。原油はバレル73ドルまで上げ、金も微増だった。
一般ニュースとしては、コペンハーゲンの環境サミットで何らかの合意が得られたことが大きく報じられている。二酸化炭素の排出について、拘束力のない合意を実現したわけで、オバマとしては、「中身のない合意が得られた」ことになる。「中身のない」がマイナス、「合意が得られた」がプラスで、差し引きゼロだ。日本としては、中国へのODAを増やすことが環境問題の眼目なので(もともとクリーンで効率的な日本が数値を改善しても、全世界的にはあまり変化がない)あまり関係はないわけだが、オバマが一応、大きな課題をそれほど傷つかずに切り抜けたことは重要だと思う。オバマ効果(feel good factor)で株が持ち直しているところもあるから、彼が大失敗をすれば、暴落のリスクも高まるのである。
その「オバマ暴落」のリスクは、医療制度改革でもって、どんどん高まっていくだろう。というのも、こちらはあまりに利害関係が濃密であるために、「中身のない合意」では誰も納得せず、集中砲火を浴びてしまうからである。切実な内政問題なだけに、ハードルが高いのだ。製薬業界が用意したロビイング予算は、すでに昨年の大統領選におけるマケイン候補の選挙資金を軽く上回る水準になっているというが、そのいっぽうで「医療保険会社をなくしてやる」と息巻く上院議員もいるといった具合で、左右(と言ってよいと思う)の対立が深刻な問題なのだ。
曖昧といえば、11月で失業率の低下を報告する州が増えたという明るいニュースがあるいっぽうで、地方の中小銀行がさらに5行破綻した。これで今年の破綻行数は138に達したことになる。これは前回、銀行危機が襲った1991年の124行、1992年の120行を大きく上回る数字で、事態の深刻さがよくわかる。だいたい、「これはいつ以来最高の数字です」という解説がつかなくなってしまった。たぶん、1991、2年の前は、最終的に6000行が消滅した大不況時代になってしまうのだろう。
こうして、すべてがどっちつかずのままに、また一つ週が終り、年末へと近づいていく。欧米のクリスマス休暇、日本の年末年始の間に、どういう形で今年一年の反省が行われ、来年の指針が立てられるのか − 気の早い話だが、年明けの市場は大荒れになりそうではないか。