Ben Bernanke, Man of the Year

昨日のダウは、前日比1.27%低い10308ドルで終わっている。前日の終わりより低いところから始まり、下げ基調の一日だった。
経済データが色々出てきて、見出し的には「回復は緩慢」ということになるのだが、真相は「景気刺激策に支えられた回復、息切れ」なのだと思う。
レイオフされた者の失業保険新規請求件数が久しぶりに、予想外の上昇」
「4週平均では昨年9月以来最低に」
これを、吉と見るか、凶と見るか。予想外のレイオフ増大は、しゃっくりのようなもので、回復の大筋は変わらず、なのか。それとも、レイオフ件数の低下トレンドは、とうとう「底を打った」のか。これだけでは、何ともわからない。
ただ、マクロのデータだけを見れば回復は続いているが、企業は自信不足、ということは、わかっている。将来に対して依然として不安が強いから、雇用も設備投資も行わないのだ。だが、それでは本格回復は望めない。
「これだけの景気刺激策、救済策を行えばだいじょうぶだろう」と頭では思っていても、「だいじょうぶだから、さっそくお金を使おう(どうせまた、すぐに稼げるから)」とはいかないのだ。リーマン・ショック以後の恐怖が、臓腑に刻みつけられたようになっていて、他のみなさんが財布の紐を緩めたのを見届けた後で、自分もそうしよう − と、誰もがそう思えば、誰も財布の紐を緩めず、回復は軌道に乗らずじまいなのである。
そして今のアメリカ経済は、ちょっと考えれば、不安にならざるをえないものである。2000年代に入って、あれほどの高成長を実現したことのほうが、むしろ不思議なのだ。実態とかけ離れた水準に通貨の為替レートを設定し、財政赤字をじゃぶじゃぶと出しているのだから、いずれ苦痛に満ちた調整は訪れずにおかないはずではないか。
その不安を、とにもかくにも抑えこみ続けたという意味で、ベン・バーナンキは殊勲賞ものであろう。そう考えた人は多かったようで、バーナンキは TIME 誌の「マン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたし、上院も無事に彼のFRB議長再任を決めている。まあ、ここで選手交代となれば、それだけで株もドルも暴落必至なのだから、当然といえば当然の決定だ。
だが、そのバーナンキは、来年2月に低金利以外の金融緩和措置を打ち切ると表明した。アフガンではないが、出口を明確にしたのだ。終わりがいつかがはっきりすれば、誰もがそわそわしだす。それがマネーゲームの常道であろう。最後は誰もが逃げ出し、暴落がやって来る。だとすれば、逃げ出すのは早いほうがよいであろう。そう誰もが思った時に、暴落は発生する。そのためのスイッチは、バーナンキが金融緩和の「出口戦略」を口にして、しかも再任されたことで、入ってしまったのではないだろうか。