ダウ、10452に逆戻り − インフレ懸念?

ダウ、昨日から、半パーセント・ポイント近い下落である。
11月中の卸売物価上昇率が、年率換算で1.8%まで上昇したからだという。コア・インフレ(エネルギーと食糧を除いた物価上昇率)は0.5%上昇。どちらも、エコノミストの予測の平均値を上回ったのと、10月比で上昇していたということで、インフレ懸念 → 利上げ懸念と展開して、軽い売りとなったのだろう。
だが、11月の産業のキャパシティ(フル稼働に対する比率)は71.3%で、10月の70.6%よりは軽く上昇したものの、依然として深刻なギャップ(つまりは、失業と施設の遊休状態)が続いている。
また、原油価格の上昇にしても、失業率が上がり、通勤しない人が増えたので(アメリカは全国的には自動車通勤が主体)ガソリン消費が伸びず、原料費高騰を消費者に転嫁できなくなっているという。
つまり、アメリカのインフレ懸念は非常に微弱であるようだ。来年どころか再来年いっぱい、インフレについては気にしないでよい、などという声まである。
インフレが問題にならないのは、景気が本格回復をしないままに推移するということであり、そうなると、ダウがここまで戻したのが不思議になってくる。暴落が近い、などと言う気はない(これまで何度かそう予測を立てて、恥をかいている。まあ、自分で投資をしているわけではないのでダメージはないが)。だが、さらなる上昇どころか、現行水準が維持される根拠さえ希薄なのだ。
ここで問題なのが(そして、クルーグマンの論調などを見ていると、アメリカではどこまで理解されているか、ちょっと心もとないのだが)、ドルに関しては

インフレ → 利上げ → 株価暴落 → 資金流出 → ドル暴落

もさることながら、

デフレ → 配当低下 → 資金流出 → ドル暴落

という、二通りの暴落シナリオがある、ということだ。ここまでは政権とFRBの果断さでもって支えてきたが、成長シナリオが実は絶無である(500億ドルの雇用対策支出が議会で議論されているが、5兆円にも足りない微々たる金額とあって、効果のあるはずもない)ということがじわじわと実感されるとともに、特に何かのきっかけがなくとも、ドル暴落なりダウ暴落なりということは起こりうる。リーマン・ショックが起こる2年前から、住宅ローン危機は発生していたことを忘れてはなるまい。板子一枚下の地獄という状態に、アメリカ経済はあるのだ。