ダウはもちこたえ……ているの?

23日には133ポイント上げたダウが、24日には17ポイント下げている。依然として不透明な状況が続いている。バブルの時の株価がキャピタル・ゲインを織り込んで上昇するものである以上、「上がらなければ、下がる」というのが、ポスト・バブルの株の動きの基本線だ。ゼロ金利でリスク資産に資金が流れているというのは教科書通りだが、キャピタル・ロスの確率のほうが高いとなれば、リスク・ゼロの現金へと資金は再び流れるだろう。
昨日(日本時間でいえば、昨夜)のアメリカの株価の動きは、朝に大きく下げて、午後にじわじわ上げていく、というもの。FRBからよいニュースが出て回復した、というのがAP電だかの記事に登場した解釈だ。
FRBの議事録が公表され、当分、金利を上げない方針が明らかになった。回復はあるが、失業率は高止まりをすると見込まれている」
だけど、これって、明るいニュースなのだろうか? 雇用が伸びない限り、回復が本格化することもないと思うのだが……。
民間シンクタンクの Conference Board (若き日のグリーンスパンも籍を置いていた)の実施している調査でも、景況見通し指数が10月の48.7から49.5まで上がったということだが、
「景気上昇が着実になるのは、90ポイントから」ということで、こんな統計誤差みたいな「改善」は……統計誤差でしかないはずなのである。
ちょっとしたニュース、情報で市場が一喜一憂して乱高下する(しかも、明るいニュースで売り、暗いニュースで買っているようにしか見えない混乱ぶり)というのは、けっきょく資金がだぶついているということなのだろう。日本でも、バブル崩壊後、「失われた20年」の間、マネーサプライは一貫して微増を続けている。バブル時の資金水準を維持してしまったのだ。その結果が、何度となく訪れては、すぐに雲散霧消する、数々の「ミニバブル」だった。アメリカの問題は、同じことを外国から借りている資金でやっていることだろう。
ところで、昨日のヘラルド・トリビューンには、アメリカ政府は、債務の利払いがこれから毎年7000億ドルになる、という記事が載っていた。現在の為替レートで、ざっと63兆円だから、日本の国の税収の、1.5倍くらいの見当である。アメリカのGDPの5%超だ。そして、先々力強い回復が見込まれない以上、元本を繰り上げてどんどん返済することなど不可能であり、この水準が当分続くことになる。しかも、資金流入に頼って。
これは、不安になるよな。同じヘラルド・トリビューンに掲載されているクルーグマンのコラムでは、「今はとにかく景気刺激を続けるべきで、財政収支の心配は後回しにするべきだ」という(いつもの)主張が繰り広げられているのだが、国際経済が専門のはずのクルーグマン先生、アメリカ経済が外資頼みだという点、その恐ろしさを失念しているとしか思えない。世界中の資金がアメリカに集まっているのは、アメリカ市場が魅力的だからだが、それはアメリカ人の消費意欲が旺盛だからで、その旺盛な消費意欲の根源にあるのは、外国からの借金だから、使いまくることが苦痛でないという国民心理である、と。こう見ると、実はアメリカに投資するべき確たる理由というのは、存在しないということが、おわかりいただけると思う。今やアメリカ経済は、外国との関係において、流入する資金が出ていく資金を上回り続けることでかろうじて回っている、巨大ネズミ講の様相を呈しているのだ。いや、その構造はこの四半世紀あまりずっと同じなのだが、資金を流入させるべきシナリオが消滅してしまった。後は世界が(アメリカの貯蓄者も含めて)その点に気がつくのがいつか、という問題だけなのだが。
あ、いかん。いつも書いていることになってしまった。とはいえ、現実の深層が変わらず、表層がその深層からずれまくりで、大規模な修正、調整を待つばかりの、じりじりしたような時間である。繰り返すが多くなることは、ご容赦願いたい。