昨日からの続報

週末はお休みにするつもりだったのだが、アメリカ時間で金曜日の株式取引が終わるのがこちらの早朝とあって、土曜の朝に書いている。まあ、もともとが自由業なのだから、関係ないのだけれど。
20日金曜のダウは、朝から下落していって昼前に底をうち、午後2時くらいから再度上昇をはじめて、一日全体としては微減という「U字型」の一日として終わった。ただ、この日に出てきたアメリカ経済のニュースは、やはり相当に不吉である。

フロリダ州の小規模銀行 Commerce Bank of Southwest Florida が破綻した。これで今年に入って124行目である。貯蓄信用組合の連鎖破綻が起きた1992年が、確か126行だから、その実績はたぶん、年内に超えられる。
破綻したどの銀行も小さいので、リーマン・ショックとは違って衝撃度は低いのだが、それでも解説記事で「ほんの数ヶ月前に検査当局が『健全』のお墨付きを出した銀行が、破綻状態に陥ってしまう」などとあるのを読むと、ぞっとする。

もう一つの問題は、アメリカ人の貯蓄率の増大だ。GDPに占める家計の貯蓄の比率が1.5%から3%に上昇したのだという。最終的には8%まで上昇する、などというエコノミストの予測が紹介されている。
これ自体はアメリカ経済にとって朗報だと思われる。借金体質から抜け出す第一歩なのだから。とはいえ、アメリカ人の旺盛な消費意欲に引っ張られていた世界経済にとっては、最悪の情報だ。アメリカのGDPの3%から8%に貯蓄が増えるということは、5%の貯蓄増、つまりは5%の消費減である。アメリカの昨年のGDPが14兆ドル弱だから、世界からざっと7000億ドル、つまりは63兆円の消費支出が奪われる計算だ。家計の貯蓄増、消費減を見て、アメリカ企業も投資を控えるだろうし、政府としては支出を増やして需要を支えたいだろうが、こちらも利払い額の巨大さが議会で問題になったりしているので、これ以上の財政積極主義は見込み薄である。
で、7000億ドルもしくは63兆円の需要減だが、これは凄まじい破壊力だ。タイとインドネシアのGDPの合計に匹敵する、と書けば、その衝撃の想像がつくだろうか。しかも、アメリカ人の消費のそうとうに大きな部分が、輸入である。しかも一次産品や食料品を輸入している日本とは違って、アメリカの輸入とは家電や自動車、衣料品、雑貨など、不況になれば真っ先に購入が見送られるものばかりである。
世界経済の本格不調は、始まったばかり、ということか。