7月に入って……

拙訳新刊『ソロスの講義録』が出てちょうど2週間後の6月30日くらいから、日、米、欧とも、株価が下げ止まらなくなっている。日経平均なんて、来週中に9000円割れしそうな勢いだ。
一昨年に『ソロスは警告する』を敢行してから、ちょうど2週間後にリーマン・ショックが起きたことを思うと、不気味な暗合という他はない。

今回こそ(期待していたみたいで嫌なのだが、来ることはわかっていたので)、ほんものの二番底だろうと思う。きちんと回復する/成長が再会するための期待醸成シナリオは存在せず、そうした現実から目をそらせるためのグッド・ニュースは品切れ、アフガニスタンでは戦死者がばたばた、そしてメキシコ湾岸では原油流出が止まらずと、よいことなど、一つもないではないか。

原油も金も下がり始めた。こちらも来週中に70ドル割れ、1200ドル割れとなるであろう。特に金価格は、インフレ懸念が払拭されるとともに、暴落するはずである。このあたりは私自身のセオリーが試されるところなので、固唾を呑んで見守っている。

今から2週間あまりでいちばんの見ものは、中国農業銀行のIPOの行方だろう。中国政府としては、中止を宣言して信用不安を招くわけにもいかず、株の大量放出で相場を暴落させるわけにもいかず、というところである。ありそうなのは、外貨準備金を外国政府に貸して、迂回する形で株を買うが、それでもその後相場が崩落するという展開だ。

管直人がなにゆえ選挙目前に消費増税を言い始めたのか。昨日、「財政再建の話をしないとG8でつまはじきにされるから」という解説を聞いて、なるほどと思った。それと同時に、管直人は二重に馬鹿だ、とも思った。
だって、G8なんて、a bunch of has-beens ではないか。今や。イタリアとか、いるのだよ。ドイツもフランスもイギリスもイタリアもアメリカも、マクロ経済運営について、日本に対して偉そうなことが言えると思っているのかね? 今やG8が檜舞台というよりは、懐かしの大箱キャバレーみたいなものでしかなくなっているというのがわからず、参加料金として自分の政治生命を差し出してしまった管直人。やはり参院選後には消える運命か。「簡直人」とか「完直人」と解明するべし。

というわけで、日本、BRICs、カナダにあとトルコくらいを組み合わせて、新G8を結成するというのは、いかがだろう? そっちのほうが建設的な話し(インフラ整備とか環境対策とか)ができると思うのだが。

トルコとイスラエルの閣僚同士が人目を忍んで会ったらしい。イスラエルとしてはトルコの変心がショックかもしらんが、2003年の時点でこの展開をちゃんと読んでいなかったのは、中東の住人としていかがなものか。だって、サダム政権打倒の最大の受益者はイラククルド人ですからね。そして、自分たちのサンクチュアリを手に入れたイラククルドは、当然ながらイラン、トルコ、シリアのクルド人独立運動を支援するでしょう。原油の販売代金も潤沢なわけだから。
トルコにとっては、これは死活的な脅威ですから、当然ながらイラン、シリアと接近する。今回のアメリカの「精製済みガソリンのイランへの禁輸措置」も、トルコが政府公認で大々的に抜け荷をすることで、まるで効かないのではないかな。

中国ウォッチャーで中国株の投資も楽しむ友人いわく、「温家宝の経済政策は、常に一歩出送れる」とのこと。どうやら、周囲をアメリカ帰りのエコノミスト軍団が固めているのがガンということか。確かに、改革開放体制の中国で、マルクス主義に対する郷愁などというものは、ないだろう。恐るべしエコノミクス、中国四千年の智恵をもってしても、その破壊力にはあらがえず。本家本元のアメリカもボロボロだから、まあ、当然か。