今年は無事に年が越せそうな……

ギリシャ危機が遠のいた。パパンドロウ政権の財政緊縮策(2009年度の12.7% から2010年度には9.1% まで財政赤字を減らすという。ちなみにEUが公式に加盟国に認めている財政赤字上限は3%)を、ギリシャ議会が可決したのだ。
フィッチ、S&Pがギリシャ国債を格下げしたことをきっかけに注目を集めたギリシャのデフォルト危機だが、ムーディーズが格下げをしなかったことに加えて、今回の議会の建設的な態度でもって、危機は一先ず回避されたものと思われる。
ギリシャのデフォルトは、ただちにスペインなど、他の弱体EU加盟国の経済危機に波及するものと思われていた。だが、ここで欧州中銀がギリシャ救済にかけつけては、モラル・ハザードが悪化するいっぽうである。おそらく英エコノミスト誌の、「厳しく対処するべし」という論説などが効いたのだろう、ギリシャが良識路線をとるという、最もありそうにない結末になった。
いっぽう、日本からも建設的な動きが出てきている。とはいっても、経済政策方面ではない。記録的な財政規模、記録的な財政赤字となる来年度予算が決まったが、鳩山首相の万事につけ煮え切らない態度と相まって、赤字財政も巨大としか言いようのない財政規模も、それ自体とししては何の景気浮揚効果も持たないものと思われる。ダム建設を凍結し、公共事業は大幅削減されるわけだが、成長戦略がないままに「悪者」の土木を叩いても、いいことはないだろう。意味もなく不安が高まってしまっただけに終わりそうだ。
私が日本政府の動きとして注目しているのは、拉致対策費が倍増されたという点である。増額分の大半は、情報収集費に充てられるのだそうだ。これはなかなかうまい手で、拉致問題に冷たいと思われていた民主党政権にとってはアピールのチャンスだし、しかも情報収集費はけっきょく、このタイミングだと「北朝鮮崩壊のXデー」を探るという(北朝鮮の現体制が存続するか否かは、当然ながら拉致問題の行方とも強く関わって来る)しごくまっとうで、日本がぜひとも必要としている活動に支出されることになるのである。日本政府、完全な脳死状態というわけではなさそうである。また、北朝鮮崩壊の可能性がそれだけ高いということでもあるのだろう。北朝鮮崩壊 → 日本の大金融緩和という、私の最近のバブル・シナリオに、現実が一歩近づいているようだ。
ヨーロッパの危機が遠のき、日本が東アジアの危機に備えを整えつつあるいっぽうで、アメリカはどうだろうか? 医療制度改革が成立したことはオバマ政権にとっては大成功だし、この余波でもって年は越せるだろう。だが、一つ頭の痛い現実が明らかになってきた。それは、アメリカの家計が住宅ローンの返済済み分(home equity というやつ)を担保にして銀行から融資を受けることが、きわめて難しくなっているという事実だ。まあ、馬鹿みたいな住宅価格上昇が見込めないのだから当然なのだが、アメリカ人の消費のつっかい棒がはずれたかっこうで、景気はこれからもどんどん冷え込んでいくことが確実となった。